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月締め作業が1時間から15分になった話——個人事業主の経理とAIエージェント

公開日: 2026/06/02
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はじめに

個人事業主として仕事をしていると、経理事務も自分でやることになります。
売上の管理、経費の記録、そして確定申告。誰かに任せれば良い話?(憧れ!)なのですが、規模が小さいうちは自分でコツコツ進めている人も多いのではないでしょうか。

私もそのひとりで、総勘定元帳や経費帳といったものを自前のエクセルで管理しています。
日々の記帳、月に一度の月締め、年に一度の確定申告。
特に月締めには毎月1時間ほどかけていました。

それがAIエージェントを活用するようになってから、同じ作業を15分でこなせるようになりました。
この記事では、その仕組みと背景にある技術の話を書いていきます。

毎月やってくる月締め作業

私の場合、毎月やっていることはざっくりこんな内容です。

  • 交通費の確認(ICカードの残高と帳簿のずれがないか)
  • 電気代や通信費など、自宅兼仕事場の費用を仕事分と生活分に按分する(家事按分)
  • 売上の確認(入金済みのものと未入金のものの整理)

これらの確認作業には、それぞれ「こういう手順で確認する」というチェックリストを作っています。
間違えてはいけないのは当然のこと、その時の気分によってブレてもいけないので、毎月同じ手順を機械的に繰り返すようにしています。

それでも人間がやっている以上、見落としが出ることもあります。
私の場合、確定申告のタイミングで交通費の1件のずれを追いかけて数時間かかった、ということもありました。
「どこかで1円合わない」という状況を人間が目で追うのは、かなり消耗する作業です。

経理事務(の一部)をAIに任せる

生成AIは経理が得意ではなかった

少し前、2023年頃の話をします。

当時、生成AIが話題になり始めた頃、「簡単な算数の問題も間違える」という指摘がよくされていました。
これは生成AIの仕組みに由来しているようです。

LLM(大規模言語モデル)は、大量のテキストデータをもとに「次にくる言葉を予測する」という処理を繰り返すことで文章を生成している——というのは有名な話です。
人間と同じ形で意味を理解しているわけではなく、パターンから言葉をつなぐ仕組みなので、計算のような厳密さが求められるタスクは本来得意ではない、ということですね。

そんなことから、「経理事務は生成AIには向いていない」というのが、当時の自分の判断でした。
数字を扱う仕事を、確率論的に言葉をつなぐ仕組みに任せるのは構造的に無理がある、と。

苦手なタスクは得意なツールに任せる

しかし、この課題は今ではかなりクリアされています。

調べてみると、LLM周りの何かが原理的に変わったとかいうことではないようですね。
どう対処しているかというと、計算が必要な場面でLLMが直接答えを出そうとするのではなく、自分でPythonなどのコードを書いて実行し、その結果を受け取って回答するようになっているそうです。
苦手なタスクは得意なツールに任せる、という発想ですね。

LLMが「この計算はコードで実行しよう」と判断して、コードを書き、実行し、結果を受け取って答えを返してくれます。
計算処理そのものはPythonが実行するため、LLMが暗算する場合よりもはるかに正確です。
最近のAIサービスでは、計算が必要な場面でコード実行ツールを利用するものが増えましたね。

AIエージェントという考え方

この「ツールを使う」という考え方を発展させたのが、AIエージェントというものだそう。

以下はAIによる解説:

一般にAIエージェントと呼ばれる仕組みでは、目標を与えられたAIが、人間から逐一指示されなくても自分で判断しながら複数のステップを実行する仕組みのことです。
検索する、コードを書いて実行する、ファイルを読む、結果をもとに次の手を考える——そういった一連の作業を自律的にこなします。

概念自体は以前からあり、エンジニアがAPIを組み合わせて「自分でエージェントを作る」ことは2024年頃にはすでにできていたようです。
ただその頃はまだ「作るもの」であって、多くのユーザーが直接触れるものではありませんでした。

自分も「日々のタスクはそこまでして解決(自動化)したい課題かな…」という印象で、そんな技術の動向を遠目に眺めているだけだった記憶があります。

スキルという仕組みが転機になった

転機になったのが、スキルという仕組みの登場です。

「この作業をこう進めてほしい」という手順をまとめてAIに渡すことができます。

私はこれを使ったとき、「あ、AIエージェントってこういうことか」と初めてダイレクトに実感しました。
それまでの生成AIは「賢い対話相手」という感覚でしたが、スキルを使うことで「仕事を渡せる相手」に変わった印象です。

MCPという仕組みも可能性を感じていましたが、これはAIにさまざまな外部ツールやデータを利用させるための仕組みでで、自分がやりたいことには少し大げさかな、という印象がありました。
スキルは「特定の作業の手順を渡す」というシンプルな仕組みで、自分のユースケースにはばっちり当てはまっていました。

経理事務と相性の良い「スキル」

月締め作業を振り返ると、スキルとの相性がよかった理由がいくつか見えてきます。

手順が決まっていて、毎回同じように実行したい

月締め作業はほぼ同じ手順を毎月繰り返します。確認する項目も、判断の基準も、だいたい決まっています。スキルが最も力を発揮するのは「手順が決まっていて、毎回同じように実行したい作業」なので、構造的に相性が良いです。

数値の照合はコードで実行できる

帳簿間のずれを追いかける作業は、前述の「計算はPythonに任せる」仕組みと組み合わさります。数値の照合や集計はコードとして実行できるので、人間より速く正確に処理できます。確定申告前に交通費1件のずれで数時間かかった経験は、まさにこれが人間の手作業だったから起きたことで、スキルとして整備すれば再発しにくくなるはずです。

ヒューマンエラーの要因との相性

月締め作業でミスが起きやすいのは「確認漏れ」と「転記ミス」です。どちらも「やること自体はわかっている、でも間違える」という人間の注意力が引き起こすミスです。AIエージェントは疲れないし、集中力が落ちないし、手順を飛ばさないので、この種のミスは大幅に減らせます。

自分がチェックポイントや手順をリスト化していたということは、すでにその作業が「スキルに渡せる形」に近い状態だったとも言えます。
チェック機能のコアな部分はPython、手順リストに沿ってどのPythonコードを使うか判断するのはLLM、という役割分担に整理できました。

実際にスキルに組み込んだ内容

今回整備したスキルでは、以下の作業を自動化しています。

  • 帳簿間のずれがないかの調査
  • 月々の固定費の入力漏れがないかの確認(入力漏れがあればエクセルにコピペできる形で提案)
  • 売上のうち、入金済みのものと未入金のものの整理
  • その月の簡単なレポートの作成

仕組みが固まってから3ヶ月運用してみましたが、このまま次年度の確定申告まで走れる感触があります。当初の目標は「月締めを手伝ってもらいながらAIに経理の流れを理解させ、確定申告時の調査も任せられるようにする」ことだったので、まずは順調なスタートだと思っています。

向いていない部分もある

当然、現状では完全に経理事務を任せられるわけではなく、判断が必要な場面はまだ人間の出番です。

たとえば「この支出は経費にできるか」という判断は、状況によって変わります。

また、イレギュラーな取引——一括前払いの保険料やサーバー費用など——は、時々しか発生せず手順が固まっていないぶん、スキル化しにくいように思います。 ただ、これは整理できれば必ずスキル化できるとも思うので、いつかクリアしたい課題のひとつです。

まとめ

経理事務の中でも「毎月決まった手順で、数値の正確さが求められる」部分は、AIエージェントとスキルが非常に得意な領域です。「判断が必要」「イレギュラーな頻度」の部分はまだ人間が設計側に回る必要がありますが、繰り返し作業の自動化という点では、思っていた以上に実用的でした。

月締めが1時間から15分になったのは、その前者の部分をうまく切り出せたからだと思います。

生成AIに対して「計算が苦手」「経理には向かない」という印象を持っていた方にこそ、今のAIエージェントの実力を一度試してみてほしいと思っています。